世界にはさまざまな「季節のお菓子」があります。
連載「世界お菓子カレンダー」では、フランス・グルノーブルのパティスリーで研修した製菓衛生師のMamiさんに、「世界のさまざまなお菓子」のルーツなどを季節に合わせてご紹介いただきます。
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今回はキリスト教「三大祭」の一つである「聖霊降臨祭=ペンテコステ」に食べる、南フランス発祥のコロンビエというお菓子をご紹介いたします。
三大祭とは、クリスマス、イースター、ペンテコステですが、三大祭の一つといっても、ペンテコステは日本ではあまり馴染がありませんね…。
ペンテコステは、イエスが昇天された後、弟子たちのもとへ聖霊が天から降りてきたことを記念する日です。その日から使徒が布教をはじめたことから、教会の誕生日と呼ばれる場合もあります。日にちは毎年変わりますが、イースターから50日後の日曜日とされていて、今年(2021年)は、5月23日(日)です。
コロンビエは、どのようなお菓子でしょうか。一番の特徴は、アーモンドたっぷりのしっとりとした生地に、南フランス名産のメロンやオレンジのコンフィ(砂糖漬け)が焼きこんである風味豊かな焼き菓子であることです。
まわりには、アーモンドが散りばめてあります。そして、仕上げの糖衣が乾燥を防いでくれて、日持ちのするお菓子です。更にもう一つ大切な特徴があります。
それは、「白い鳩」がモチーフであることです!お菓子の名前であるコロンビエは、フランス語で「鳩小屋」を意味します。白い鳩はコロンブと呼ばれ、平和や聖霊の象徴なのです。
そのようなことから、お菓子の上にはマジパン(アーモンドから作られたペースト)で作られた白い鳩が飾ってあります。マジパンではなく、ハトのフェーヴ(陶器製の置物)を生地に焼きこむ場合もあります。
切り分けた時にフェーヴが当たった人は1年以内に結婚できるという言い伝えがあり、とても盛り上がるそうです。
私もコロンビエを作ってみました。
メロンのコンフィは手に入らないので、自家製の甘夏ピールを入れました。上に飾ったピンクの粒は、細かくしたアーモンドの砂糖がけを色付けしたものです。
一番苦労したのは、マジパンの鳩です。
なぜかアザラシのようになってしまうのです。たまにベランダにやってくる鳩を観察して、なんとか作ったのがこちらですが、まだまだ練習が足りないようです。
生地は、しっとり美味しくできました。
今度は、本場プロヴァンスの色鮮やかなフリュイコンフィ(フルーツの砂糖漬け)を使って作ってみたいものです。
余談ですが、イタリアにも鳩を模った菓子パンがあります。こちらは「コロンバ」と呼ばれ、イースターに食べるそうです。
今月は、平和を運ぶ白い鳩のお菓子、コロンビエColombièrのお話でした♪
(文・写真 Mami)
Mami
製菓衛生師。
日本菓子専門学校卒業後、フランス南東の街グルノーブルのパティスリーにて研修。帰国後、洋菓子店勤務を経て、1997年から小さなお菓子教室を始めて現在に至る。
季節感を大切に、素朴かつ洗練されたお菓子づくりを心がけている。
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