深掘り!トレーに秘められた「匠のワザ」 〜第1回モロゾフFAVORITE 32個入れ」〜

date_range2020/3/24
folder匠の技

真空成型用金型メーカー・城南村田の青沼です。

みなさん、「真空成型」って何だかご存知ですか?

「真空成型」とは文字通り「真空にして成形を行うこと」です。作られているものは主にフードパックやトレーです。身近なものではコンビニのお惣菜やお弁当、コーヒーのフタなどがあります。

材料はいわゆるプラスチック(PetやPP・PSです)を使用します。
シート(板)状のプラスチックを加熱して柔らかくなったところに、作りたいカタチの金型を押し当てて、金型とプラスチックの間の空気を抜いて「真空」にすることによって、プラスチックを金型なりの形状にする成形方法です。

こちらの動画をご覧いただくと雰囲気がわかるかもしれません
https://www.facebook.com/watch/?v=1765837513721538/

私たちはチョコレートやクッキー用トレーの金型を製作することが多いのですが、ユーザーであるお菓子メーカーの方々と話をする機会が少ないので、ユーザー各社で発売しているクッキーやチョコレートを題材にパッケージの意図を考える企画をはじめました。

第1回はモロゾフの「FAVORITE 32個入れ」をピックアップしました。

ピックアップした理由は、たまたまデパ地下で目に付いたからです。
たぶん、たまたま目につくというのが大切なのだと思います。

他メーカーのアソートチョコレートも見ましたが、のちほど話をするラグビーボールの形状(カカオポット型)のチョコレートが真ん中に並んでいる姿が目立っていました。

箱をあけるとトレーにPet素材のフタがついていたので少し驚きました。なぜなら売り場ではフタはされていなかったからです。私たちの肌感でも、以前に比べるとPet素材のフタを使用するトレーが増えてきていると思います。

このトレーのデザインで特徴的なのは、真ん中にカカオボット型が5個と四角い板状のチョコレート3枚が配置されているところです。

その上下はほぼ正方形のマスがキレイに並んでいますが、真ん中だけ仕切がなくて、面が斜めになっています。またカカオボット型はその形状を強調するように、ポケットの周りに二重に輪郭線が追加されています。

この配置からみて、当然このアソートチョコレートの主役はカカオボット型だと思います。カカオポッド型が並んでいる列が斜めにしてあることで、平置きしたときにチョコレートが見る人の方へ向くようになっており、「主役」のカカオボット型チョコレートと「FAVORITE」と印刷された板状のチョコレートがしっかりと見えるように工夫されています。

しかし、斜めにすることによって、チョコレートを入れるポケットが浅くなりズレやすくなるため、それを防ぐためにPetのフタで抑える構造にしたのだと思います。Petのフタをつけてまで真ん中の面を斜めにしたかったんですね。
上下の正方形のマスにはリブ(ポケットの壁の縦の彫り込み)があります。

金蒸着のシートにリブが設置されると、真ん中に配置したチョコレートが金蒸着のトレーに映り込み高級感を引き立てます。チョコレートは黒や茶色等の濃い色が多いためです。

リブを鋭角な形状にすると、光がシャープに反射します。逆にリブ形状に丸みを持たせると、反射の具合もぼやけた感じになり柔らかな雰囲気を醸し出します。この「FAVORITE」のリブは後者の丸みを持った形状にされています。

ちなみに、リブ形状は金型の製作方法(加工方法)によって限定されてしまいます。マシンによる切削だと丸くしか加工できませんが、木型でノミを入れる方法だと鋭角にすることができます。

「上げ底」についてはプラマークが配置されている一つのマスを除いて、すべてのポケットに施されていました。プラマークは最低8mm角(刻印・エンボスの場合。印刷やラベル・シールの場合は6mm)にしなければならないという法律があります。プラマークを「上げ底」の底に配置する事はサイズと成形性の問題で難しかったのではないかと思います。

全体的にこのパッケージは、綺麗にバランスが取れていると思います。そして、中心のカカオボットのラインが目立っています。「カカオボット型チョコレートを目立たせ消費者の目に止めよう」というこのトレーの試みは、メーカーの意図通り成功しているな、と私は思いました。

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