世界にはさまざまな「季節のお菓子」があります。
連載「世界お菓子カレンダー」では、フランス・グルノーブルのパティスリーで研修した製菓衛生師のMamiさんに、「世界のさまざまなお菓子」のルーツなどを季節に合わせてご紹介いただきます。
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1月は、パイのお菓子『ガレット・デ・ロワ』のお話です。近年、年末年始になると日本のパン屋さんやパティスリーでもよく見かけるようになりました。
ガレット・デ・ロワは、1月6日のキリスト教行事、公現祭(エピファニー)では欠かせないフランス菓子です。『王様の菓子』を意味する名前のとおり、このパイには金紙で作った王冠が添えられます。
そして、もう一つ欠かせないのは、『フェーブ』と言われる陶器製の小さな置物です。フェーブは、『そら豆』の意味で、古代から命のシンボル。もともとは本物のそら豆が使われていました。現在は、お菓子や動物・建築物などデザインは多彩で、新作を心待ちにしているコレクターも多いようです。
そのフェーブが大きなパイの中にひとつ隠されていて、切り分けた中にフェーブが入っていた人が、その日の王様や女王様になれるのです!王冠をかぶり、皆から祝福されて幸福は1年続くともいわれています。
さて、ガレット・デ・ロワはどのようなパイのお菓子なのでしょうか。地域によって違いはありますが、折り込みパイ生地の間にアーモンドクリームを挟んで、模様をつけて焼くものが一般的です。パイ生地から作ってみました!
まず、『デトランプ』という小麦粉の生地でバターを包みます。
その生地を縦長に伸ばし、三つ折りにします。向きを変えてまた伸ばして三つ折りをします。途中、冷蔵庫で休ませながら全部で6回三つ折りをします。こうする事で、焼いている間に薄く伸びたバターの水分が蒸発して、生地が浮き上がり何層にもなります。
伸ばした折り込みパイ生地を約18㎝の丸形に2枚カットします。上にアーモンドクリームをのせて、フェーブをひとつ隠します。
ふちに塗り卵をしてもう1枚の生地をぴったりとつけます。
表面に溶き卵を塗り、ナイフで模様を入れます。この模様は『レイエ』といわれ、意味があります。例えば、月桂樹(葉っぱ模様)は『勝利』、太陽(渦巻き模様)は『生命力』、麦の穂(矢羽根模様)は『豊穣』など願いが込められているのです。
数か所空気穴をあけて、約200℃のオーブンで50分程こんがり焼き色がつくまで焼きます。熱いうちに艶出しシロップを塗ったら完成です。
アーモンドクリームと焼きたてパイの組み合わせは、間違いない美味しさです。
1日だけの王になれる新年のお菓子、ぜひ今年は楽しんでみてはいかがでしょうか?
(写真・文 Mami)
Mami
製菓衛生師。
日本菓子専門学校卒業後、フランス南東の街グルノーブルのパティスリーにて研修。帰国後、洋菓子店勤務を経て、1997年から小さなお菓子教室を始めて現在に至る。
季節感を大切に、素朴かつ洗練されたお菓子づくりを心がけている。
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