世界にはさまざまな「季節のお菓子」があります。
連載「世界お菓子カレンダー」では、フランス・グルノーブルのパティスリーで研修した製菓衛生師のMamiさんに、「世界のさまざまなお菓子」のルーツなどを季節に合わせてご紹介いただきます。
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クリスマスが近づいてきましたね。
日本では、ショートケーキやチョコレート系のシックなもの、モンブラン等様々なクリスマスケーキがケーキ屋さんのショーケースを華やかにします。
12月は、日本でも馴染みのある三種類のクリスマス菓子と由来をご紹介します。
まず一つ目は、フランスを代表するクリスマスケーキ『ブッシュ・ド・ノエル』(Bûche de Noël)です。ロールケーキの表面をクリームでデコレーションする、比較的シンプルなケーキです。
フランス語で『クリスマスの薪』を意味します。なぜ薪の形なのかは諸説ありますが、古来フランスでは、クリスマスの薪は身も心も温めるものとされ、暖炉に大きな薪をくべて家族が集まったことに由来すると言われています。暖炉のある家が少なくなった近代、ケーキが『クリスマスの薪』の代わりになっているのでしょう。
二つ目は、ドイツ・ザクセン州生まれの発酵菓子『シュトレン』(Stollen)です。洋酒漬けしたドライフルーツやナッツ、スパイスをたくさんイースト生地に入れ込み、焼いた後にたっぷりと溶かしバターを染み込ませて粉糖をまぶす、とても日持ちのするお菓子です。
シュトレンの歴史はとても古く、14世紀までさかのぼります。当時のシュトレンは、水、麦、菜種油を捏ねた素朴なものでした。その後、交易路発達とともに改良され、16世紀のレシピには、アーモンドやオレンジピールとレモンピールが加わりました。19世紀中ごろに表面に粉砂糖が振られるようになり、20世紀になるとようやく現在のようなリッチな配合になり、家庭でも焼かれるようになりました。
ただ、形だけは当初から現在までほとんど変わっていません。これは、幼子イエスがおくるみに包まれている姿を模していると言われています。
最後に、『バニラ・キプフェルン』(Vanilla Kipfel)をご紹介します。オーストリアやドイツ発祥のクリスマス伝統菓子です。ドイツ語で『三日月型のバニラクッキー』を意味しますが、三日月に似た『馬蹄』の形で作られることもあります。
ヨーロッパでは、馬蹄は幸運を招くアイテムと言われています。いずれにしても、アーモンドパウダーが入っていてサクサクで、口の中でホロホロと崩れる食感が特徴です。
雪が積もったように、粉糖がたっぷりとまぶされています。
お菓子の形に意味が込められていることを知ると、より楽しくなりますね。
12月は、伝統的なクリスマス菓子のお話でした。
(写真・文 Mami)
Mami
製菓衛生師。
日本菓子専門学校卒業後、フランス南東の街グルノーブルのパティスリーにて研修。帰国後、洋菓子店勤務を経て、1997年から小さなお菓子教室を始めて現在に至る。
季節感を大切に、素朴かつ洗練されたお菓子づくりを心がけている。
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