こんにちは。
いつもお世話になります。
青沼隆宏です。
今回は、この春にM&Aを行ったスズキ工業所の仕事をご紹介します。
会長の鈴木良治は北海道の岩内に生まれ、幼いころに祖父母の家に預けられたそうです。その祖父が、岩内の漁師さんを相手に鉄工所を営んでおり、幼いころから祖父の鉄工所の仕事を手伝っていた経験が、鈴木がスズキ工業所を始めたきっかけだそうです。
スズキ工業所は、鉄工、旋盤、プレス等を行っており、主に鉄道車両用部品、農機具用部品、暖房器具用部品、漁業者向け漁具の製造を行っています。
釣り好きの私は、漁具関連の仕事に最も関心をひかれたのは当然ですが、それが理由ではないと思いますが漁具関連の仕事が増えて来ました。
その中でも、今年初めて受注した八尺と呼ばれる横幅約3.5m、重さ約400kgホタテ漁に使用される漁具についてお話しします。
ホタテは北海道が日本一の水揚げ量を誇ります。
北海道のホタテ漁は大きく分けて垂下式(噴火湾や日本海で行われています)と地撒き式(オホーツク海や根室海峡地区で行われています)に分けられます。
垂下式は稚貝をロープやかごに入れて海中に吊るし、成長させてから漁獲します。
地撒き式は稚貝を海に放して数年間成長させてから漁獲する方法です。
我々がお手伝いしている八尺は地撒き式ホタテ漁に使われます。地撒き式は、漁場をいくつかに区分して、数年かけて一回りするようにして行われています。
前年に操業した区域には春に稚貝を放流します。数年後に成長した稚貝を漁獲します。この時に使用されるのが八尺です。
八尺は大きな熊手のようなもので、船の左右に海底まで沈めて引きます。八尺の爪は海底のホタテを浮き上がらせ八尺の後ろに付けた網で集める事によってホタテを収穫します。
八尺は、効率よく漁が出来るサイズで海底から浮き上がらない重さが必要になります(それが、現在の3.5m・400kg前後という事だと思います)。
日々引きずられるために海底に擦れる箇所には本体が摩耗してしまわないように部材を取付け定期的に交換するなどの工夫がされています。また基本形は同じですが、各船によって細かな仕様が異なります。
やはり漁師さんによって漁の仕方が細かく異なるんですね。漁期の終わる11月前後から来年の漁の始まる直前の2月半ばまでに各八尺のメンテナンスを行います。
このメンテナンスは消耗品の交換、歪んだ部材の直し・交換、錆落とし、錆止めのための塗装の塗り直し等があります。真冬の寒い時期に当たるのですが、3.5mもの大きなものをメンテナンスするという作業の大変さは初めての経験でもあり想像出来ませんが、スズキ工業所の経験豊富な職人達と一緒にどうすれば出来るのか知恵を絞ります。
モノ作りの面白さは、どうすれば出来るのか知恵を絞りながら進めるところにあると思いますが、私の好きな釣りに通じる(釣りなんかとは次元が違うと漁師さんには怒られるかもしれませんが・・・)漁に使われる漁具にモノ作りで携われると、「面白い」を超えて幸せだと思えます。
1年前はまさか札幌へ引っ越しているなんて想像もしませんでしたが、現実は更に上を行って漁具作りに携わるようになっていました。
人生は「まさか」の連続ですが、50歳を超えてこんな「まさか」が待っているとは、1mmたりとも想像出来ませんでした。人生は面白い。
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