世界にはさまざまな「季節のお菓子」があります。
連載「世界お菓子カレンダー」では、フランス・グルノーブルのパティスリーで研修した製菓衛生師のMamiさんに、「世界のさまざまなお菓子」のルーツなどを季節に合わせてご紹介いただきます。
・・・・・・・・・・
秋も深まり、りんごの美味しい季節ですね。11月は、りんごのタルト『タルト・タタン』誕生のエピソードと作り方をご紹介いたします。
タルト・タタンは、ハプニングから生まれたフランスの代表的な地方菓子です。
19世紀後半、フランス中部ソローニュ地方のラモット・ブーヴロンという小さな町で、『オテル・タタン』というレストラン付きホテルを営んでいる姉妹がいました。
二人の名は、ステファニー・タタン(姉)とカロリーヌ・タタン(妹)。ある忙しい日曜日、姉のステファニーがデザートのりんごのタルトを作ろうとしていたところ、慌ててパイ生地を敷き忘れてしまい、りんごだけを型に詰めてオーブンに入れてしまいました。そこで、機転をきかせた妹のカロリーヌが上にパイ生地をかぶせて続きを焼きました。ひっくり返すと、なんということでしょう!りんごがバターとカラメルで飴色にキャラメリゼされているではありませんか。
お客様は新しいデザートに大喜び。やがてホテルの名物となりました。
そしてパリの高級レストラン『マキシム』のオーナーや美食評論家キュルノンスキーによってパリの人々にも紹介され、大変な人気を得たと言われています。
現在でもラモット・ブーヴロンの町で『ホテル・タタン』は営業中で、タタン姉妹が使っていたオーブンなどを見学できるそうです。
作り方は様々ですが、冷凍パイシートを使用したシンプルな作り方をご紹介いたします。
【材料】底直径14cmマンケ型1台
※直径15㎝型(底が外れないタイプ)で作る場合は、りんごを5~6個使用して下さい
りんご(できれば紅玉)…3~4個
無塩バター…皮と芯を除いたりんごの重さの3%
グラニュー糖…皮と芯を除いたりんごの重さの8%
カラメル用グラニュー糖…60g
冷凍パイシート…1枚
【作り方】
①冷凍パイシートを2㎜の厚さに伸ばし、型より少し大きめにカットする。冷蔵庫で30分以上休ませる
②りんごの皮をむき、6等分のくし形にカットして芯をとり、重さを量る。分量のバターとグラニュー糖を用意する。
③鍋にカラメル用グラニュー糖を入れて、中火にかける。
鍋を傾けながら全体を溶かし、キャラメル色になったら型に流し入れる。
④フライパンに無塩バターを溶かし、りんごを加えてソテーする。
全体にバターが絡まったら、グラニュー糖を加えて混ぜる。
蓋をして約7分煮る。蓋を外して、りんごをそっとひっくり返しながらシロップをとばす。
シロップがほとんどなくなったらバットに移して粗熱をとる。
⑤型に④を並べる。少量のシロップが残っていたら最後に入れる。
⑥①にフォークで穴を空けて⑤にかぶせる。190℃のオーブンで約55分焼く。
冷めたら型のまま冷蔵庫で一晩冷やす。型の外側を温めてひっくり返して型から抜く。
艶やかにキャラメリゼされたりんごが詰まったタルト、この季節に楽しみたいものですね。
『タルト・タタン』のお話でした♪
(写真・文 Mami)
Mami
製菓衛生師。
日本菓子専門学校卒業後、フランス南東の街グルノーブルのパティスリーにて研修。帰国後、洋菓子店勤務を経て、1997年から小さなお菓子教室を始めて現在に至る。
季節感を大切に、素朴かつ洗練されたお菓子づくりを心がけている。
ブログ https://ameblo.jp/mami-skitchen-sweets/
コメント欄
コメント一覧