ある日、若手社員を連れてヒラメ釣りに出かけようと話していた時のことです。「ジギングでやってみたいんですよ」と盛り上がっていた会話の中で、ふと「自分たちでジグを作れないかな」と思い立ちました。
鉄工所としてモノづくりの現場に携わっている以上、手作りの道具を作れる環境にある。それなら試してみたい。その想いを持って、札幌工場の職人に「大体の形状と重さ・バランス」を伝えて、こんな感じのジグをステンレスで作れる?と聞いてみました。すると、「出来るよ。ちょっとやってみるわ」と返ってきたのです。
数日後、渡されたのがこのジグ。写真をご覧いただければわかる通り、金属の曲線、重量バランス、磨き具合まで、すべてが満足出来る仕上がりです。「ちょっと時間の合間に作ってみたさ。釣れるかどうかはわからんよ(笑)」と言われましたが、その一言の奥にある経験と技術力の深さに改めて驚かされました(途中で重量をどう落とすか悩んでいる姿を見ました)。

工場の現場では日々、図面や寸法通りに製品を仕上げる仕事が続きます。しかし、このジグには「技術」と「ものの良さを伝える形状」が詰まっていました。釣り道具とはいえ、ざっくりと伝えた「水中でどう動かしたいか」。そのための重さやバランス・形状に気を配るその感覚は、まさにモノづくりの本質だと感じました。
このジグを持って、「若手社員とともにいざ海へ」の予定でしたが、残念なことに当日は海が荒れて出船中止になってしまいました。試すことは出来ませんでしたが、自分たちの工場で作った道具を使って自然と向き合える時を楽しみにしています。基本的にジギングは性に合わないのですが、このジグをもってジギングへ行きたいと思うようになりました。早く使ってみて思い描いた動きが出るのか試したい。多分何かが違うでしょうから、それをどうすれば修正出来るのか考えたい。想定して実行して修正する。モノづくりは、それが「早く」「見える形で検証出来るので分かりやすくて面白い。
YMスチールスズキは、日々の製造業務だけでなく、こうした「ちょっとやってみよう」という気持ちに応えてくれる職人たちの技と心で成り立っています。その柔軟さと遊び心が、未来の可能性を広げてくれるのだと思います。
みなさんももし、「これって作れる?」というアイデアがあれば、ぜひ工場に相談してみてください。きっと、「出来ると思うよ」と笑いながら、とびきりの一品が生まれるはずです。
コメント欄
コメント一覧