世界にはさまざまな「季節のお菓子」があります。
連載「世界お菓子カレンダー」では、フランス・グルノーブルのパティスリーで研修した製菓衛生師のMamiさんに、「世界のさまざまなお菓子」のルーツなどを季節に合わせてご紹介いただきます。
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7月はまだまださくらんぼの美味しい季節ですね。今回は、さくらんぼの魅力が詰まった少々大人向きのケーキをご紹介いたします。
『シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ』は、ドイツ南西部の山岳地帯・シュヴァルツヴァルト生まれのさくらんぼケーキです。シュヴァルツヴァルトは、ドイツ語で『黒い森』を意味します。その森は、南北に160㎞、東西に30~50㎞にも及びます。
『黒い森』と呼ばれる理由は、木の多くがモミの木やトウヒ等の針葉樹であり、森を黒々と大波のように埋め尽くしているからです。グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』の舞台である、一度迷いこんだらなかなか抜け出せないあの鬱蒼とした黒い森……ケーキの上に飾られた削りチョコレートは、そのような森をイメージしています。
全体が森林で覆われているシュヴァルツヴァルト地区は、ワインの産地としては適さず、放牧や牧畜が盛んとなり、乳製品が非常に多く生産されています。またこの地区は、古くからさくらんぼの産地でもあり、良質のキルシュバッサー(さくらんぼが原料の蒸留酒)が作られています。
『シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ』は、特産物である乳製品・さくらんぼ・キルシュバッサーで作られ、姿は『黒い森』を模している、なんとも素敵な郷土菓子なのです♪
このケーキは、フランス・アルザス地方を介してフランス全土にも伝わり、フォレ・ノワール(Forêt Noire フランス語で黒い森を意味する)という名で親しまれています。日本ではこちらの方が馴染みがあるかも知れません。丸いものだけでなく、長細いもの、グラスにデザートとして盛り付けたものなど、モダンに進化しています。
クラシカルな『シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ』を作ってみました。ケーキの構成は、このようになっています。
まず、ココアパウダーが入ったスポンジを焼きます。
スポンジを三枚にスライスしたら、キルシュバッサー入りのシロップを染み込ませます。一段目にはチョコクリームとサワーチェリーのフィリング(缶詰のサワーチェリーをシロップでさっと煮てコンスターチでとろみをつけたもの)を挟みます。
※本来は、さくらんぼもたっぷりキルシュバッサーに浸けてあるようですが控えました。
二段目には、キルシュバッサーで風味をつけた生クリームを挟みます。そして全体を生クリームで覆います。
飾り用には、旬のアメリカンチェリーをコンポート(シロップ煮)にしました。
丸く絞った生クリームの上にチェリーをのせて、削ったチョコレートを飾って完成!
さくらんぼの甘酸っぱさとチョコレートのほろ苦さは、とても相性が良いです♪キルシュバッサーの香りも愉しめる大人のケーキです。
今月は、“黒い森のさくらんぼケーキ”『シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ』のお話でした。
(文・写真 Mami)
Mami
製菓衛生師。
日本菓子専門学校卒業後、フランス南東の街グルノーブルのパティスリーにて研修。帰国後、洋菓子店勤務を経て、1997年から小さなお菓子教室を始めて現在に至る。
季節感を大切に、素朴かつ洗練されたお菓子づくりを心がけている。
ブログ https://ameblo.jp/mami-skitchen-sweets/
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